糖魂

音楽と糖分と映画

オトナ

私には大切な人がいる。

私はその人にいろんな初めてを捧げた。恋愛は寄って来られると避けたくなる心理的な問題でずっとうまくいかなかった。好きな人もそんなにできなかった。でも彼に初めて出会った時にちょっといつもと違うような何か始まるような何かを感じた。いい匂いがした。

そして私たちはまるで磁石のようにすぐにくっついた。付き合ってはいなかった。クラブで踊ってキスをした。それはちょっと激しい私のファーストキスだった。自分の口の中に他の人の舌が入ってくる感触は不思議で、溶ろけてしまいそうで、とても気持ちよかった。帰ってからもずっとあの感触と映像がフラッシュバックして忘れられなかった。

次の週、彼はディナーに誘ってくれた。メイクをばっちりした。素敵なレストランに連れて行ってくれた。私たちはそこで初めてちゃんとお互いのことを知り合った。好きな音楽、映画、スポーツ、家族のこと、ありきたりな質問しかできなかったけど彼のことを知れて嬉しかった。でもまだ本当に好きなのかどうかは分からなかった。この後どうする?で私は思わずまだ帰りたくないって言った。自分でもびっくりした。口が勝手に動いた。

公園に歩いて行った。彼は私の手を指を少し絡めてきた。ちょっとドキドキした。久しぶりの感情だった。公園で家族がブランコで遊んでいた。お母さんも子供もとても楽しそうだった。私たちはベンチで休んだ。彼は私の膝の上に頭を乗せてきた。なんだか初めての経験だったからちょっと可愛いなと思った。自然と彼の頭を撫でたくなった。そっと手を這わせた。左手は彼の胸の上に置いた。彼は目を閉じながら話をした。その顔がすごく綺麗でまつ毛が長くて眉毛の形も完璧で私はすっかり見惚れてしまった。空を見上げて星見えないなあと呟いた。

久しぶりにブランコに乗った。一番好きな遊具だった。ベンチに戻って彼は私の肩を抱き寄せた。あったかかった。そして私たちはそっとキスをした。ゆっくりゆっくり。20歳、夏の夜だった。