オトナ
私には大切な人がいる。
私はその人にいろんな初めてを捧げた。恋愛は寄って来られると避けたくなる心理的な問題でずっとうまくいかなかった。好きな人もそんなにできなかった。でも彼に初めて出会った時にちょっといつもと違うような何か始まるような何かを感じた。いい匂いがした。
そして私たちはまるで磁石のようにすぐにくっついた。付き合ってはいなかった。クラブで踊ってキスをした。それはちょっと激しい私のファーストキスだった。自分の口の中に他の人の舌が入ってくる感触は不思議で、溶ろけてしまいそうで、とても気持ちよかった。帰ってからもずっとあの感触と映像がフラッシュバックして忘れられなかった。
次の週、彼はディナーに誘ってくれた。メイクをばっちりした。素敵なレストランに連れて行ってくれた。私たちはそこで初めてちゃんとお互いのことを知り合った。好きな音楽、映画、スポーツ、家族のこと、ありきたりな質問しかできなかったけど彼のことを知れて嬉しかった。でもまだ本当に好きなのかどうかは分からなかった。この後どうする?で私は思わずまだ帰りたくないって言った。自分でもびっくりした。口が勝手に動いた。
公園に歩いて行った。彼は私の手を指を少し絡めてきた。ちょっとドキドキした。久しぶりの感情だった。公園で家族がブランコで遊んでいた。お母さんも子供もとても楽しそうだった。私たちはベンチで休んだ。彼は私の膝の上に頭を乗せてきた。なんだか初めての経験だったからちょっと可愛いなと思った。自然と彼の頭を撫でたくなった。そっと手を這わせた。左手は彼の胸の上に置いた。彼は目を閉じながら話をした。その顔がすごく綺麗でまつ毛が長くて眉毛の形も完璧で私はすっかり見惚れてしまった。空を見上げて星見えないなあと呟いた。
久しぶりにブランコに乗った。一番好きな遊具だった。ベンチに戻って彼は私の肩を抱き寄せた。あったかかった。そして私たちはそっとキスをした。ゆっくりゆっくり。20歳、夏の夜だった。
なんてことない話
それは1年に1度、数日間だけ私達のところへやって来る。
鼻の花粉レーダーがピコンピコン鳴り始めた頃、ああ今年もそろそろかな、なんて心が踊る。
ただ、今年はまだ4月にならないうちにそのレーダーは鳴り始めた。
どうやら待ち合わせの時間よりも早く着いてしまうらしい。
誰もが予想した通りそれは3月末にやって来た。
心の準備がままならないまま私も会いに行った。
人々はそれと共に春を迎える。
仲間とお酒を飲む人、ぼんやり眺める人、それに会うために遠くの国からやって来た人。
それは私達日本人にとってはかけがえのない存在で皆に少しの幸福感を与える。
ただ、今年はあっという間に去って行ってしまった。
いつもならまだこの時期にもいるのに。
それはまた来年。と言っているかのように大きな風と共に去って行った。
春は出会いと別れの季節。なんて言葉があるが私達は真っ先にそれと出会い、別れている。
いつもはただなんとなく別れるのだけれども、来年は会いに行けなさそうなので今年の別れはなんだかいつもより名残惜しかった。
クレジットカードがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!
大人の象徴とも言えよう、その魔法のカードはもはや財布なんぞ持ち歩かなくても買い物ができてしまうそう。
そんなものとは無縁なアナログ生活を営んでいた私だったが、ついに先日魔法のカードを手に入れた。
カードなんぞ作ったら確実に気がついたら口座が空っぽなんて事態になるのが目に見えていたので現金スタンスだったのだが、なんせ某Amazonで古本を買うときにいちいちコンビニで支払いをするのが億劫で仕方がなかった。
よし!と決心したものの、クレジットカードなるものは種類が阿保みたいに多く、まあ困った困った。
Google先生に聞いてみると、クレジットカードと言っても年会費が無料のものから、ウン十万円かかるものまでさまざまだそう。まあ結局、某有名ブランド様にすんなり決めた。
申し込みはもはやネットでちゃちゃっと個人情報を入力。あとは審査をお待ちくださいとのことで、1週間くらいで我が手元に魔法のカードがやって来た。
あの封筒を開けて、自分の名前入りのカードを手にするときのワクワク感はたまらなかった。
とにかくギンギラに輝いていて、VISAと記された魔法のカードはああ、大人になったんだなあなんて思わせてくれた。
そして人間、新しいものを手に入れるとすぐに使って見たくなるもの。
某Amazonで古本を買い、音楽ストリーミングサービスのプレミアム登録に使った。
恐ろしいくらい便利だ。これでは金銭感覚も鈍る鈍る。
ただ、私にはもう一つ夢だったことがある。それはお店のレジでお金を払うとき、「じゃ、カードで。」とスッとカードを出すあの行為だ。
まだ実行できていないのだが、その初体験をどの店で実行するかも重要である。
喫茶店、古着屋、デパート、、なかなか決められず2週間が過ぎた。
まあ無理くり使う必要もないのかな。と思う。
レジで財布にお金が入っていないなんて非常事態に出くわしたら奴を召喚しようと決めたアナログ人間であった。
花粉奮闘記
最近は朝起きて窓を開けると春のにおいがする。
大きく息を吸うとなんだか鼻がむずむずする。
カレンダーを見ると、あれれ、もう3月か。
むずむずむずむずむずむずむず、ハックション!
きた。
奴は春の風に乗ってやって来る。
人間が春の陽気に気が緩んでる隙にやって来る。
そう、その名は花粉。
小学生の時から奴とは腐れ縁で毎年春になりかける頃に私を苦しめる。
くしゃみ、鼻水はどうにも止まらないし、ティッシュはローションティッシュでないと鼻が痛くなってしまう。ティッシュメーカーは儲かるんだろうな、この時期。
そして目にも大きなダメージをくらう。
かゆくてかゆくて仕方がない。ただ、我々女というのは外へ出る時必ずと言っていいほど化粧をする。そう、目をゴシゴシできない。かゆいのに。だから必殺目薬攻撃を仕掛け、かゆみを軽減させるしかないのだ。
つらい、ああつらい。
もうスギの木とか伐採してよ(暴言)
日本に花粉飛んでない地域とかないのかな、移住したい。
四季の中で春と秋が好きだけど、こうやって考えるとやっぱ秋が一番になる。
そんなことを鼻水垂らしながら考えて文章を打つ私である。
川の端
自分は気まぐれな人間であると思う。
突然思い立ったら出かけてみたり、散歩してみたりする。
そんな具合で映画も見に行く。
昨日はリバーズエッジという映画を見た。
映画館へ行くとまずはチケットを買う。そしてポップコーンの匂いにつられて売店の方へ足を運ぶ。
大抵はドリンクと軽食を買って入るのだが、ここのところ節約モードに入っているのでジンジャエールだけ買った。私はジンジャエールが大好きなのだ。
入り口でチケットを見せるとそこからは薄暗い道を歩いて行くあの感じがお気に入りである。
近日公開となる映画の広告がずらりと並んでいる。
肝心な映画はというと、若者の闇を見せつけられた感じ。
愛と暴力って紙一重なんだな。
でも、なんだか最後が腑に落ちなくてモヤモヤしながら帰った。
キャストが好きな俳優、女優だっただけに少し残念である。
それにしても見たい映画が常に3本くらいあるからお金がいくらあっても足りない、ぬぬぬ。
糖魂をはじめたわけ
学生時代、何度も考えた。
古典で昔の人の日記を読んで問題を解くけど、そういう日記とやらはどこかで発掘されたものなのか、と。
歴史家として研究をしている人たちはやはり過去、自分たちが生まれるずっと前の歴史について知りたくて研究や発掘をしているわけで。
この先も歴史家が存在するのか確かではないが、まあこういうくだらん日記を残して後の世に発掘されたらいいなという私のくだらん願望、そして何か残してやろうという思いから文章を書くに至る。
日記は中学の頃から書いていたが、何か特別な出来事がなければ書かなかった。
でも何もしないでただ過ごすことはほとんどないのだから自分が思ったこと、あれが美味かっただとかオカンにイラついたとか、そういう日常を書きたいと思った。
それに、あとで見返してみた時にこんなこと考えてたんだとか、ちょっと笑いが込み上げてくるからこれまた面白いんだ、日記は。
だから何年も続けていけたらいいなあなんて思う。
こうやって電子端末に吐き出すことでスッキリすることがあるから。
すっかりIT化に飲み込まれている私である。
和菓子王国
日本人であるならば皆一度は和菓子を食べるだろう。
あの独特の風貌、味、細工、日本人ならではのすばらしい産物である。
甘党を自称する私は人並み以上に和菓子摂取頻度は高いと思う。
先日、西の都、京都へお邪魔する機会があったのだがそこら中に和菓子屋があって非常に頭を抱えた。
これだけたくさんの和菓子屋があってはどこに行けば良いのかわからなくなってしまう。どうせ行くなら最高級に美味しいところへ行きたいなどと呟いていた。
まあこんなことを考えていては拉致が開かないのでとりあえず歩いてバッタリ出会ったお店から入ってみることにした。
初めに入ったお店は開放式(?)で決して老舗の和菓子屋という風貌ではなかったが、近くに寄るとおばちゃんが笑顔でいらっしゃいと声をかけてくれた。
そこには和菓子がずらりと並んでいて、タレにどっぷりと浸かったみたらし団子もいた。
私はみたらしに弱い。
家の近所にもお気に入りの和菓子屋があるのだが、そこの前を通ると必ずと言っていいほどみたらしを買ってしまう。少し団子の焦げの味がついてるほうが好みだ。
都のみたらしは未体験だったので目が眩んだ。
さらに違う角度から視線を感じたので見てみると、まんまるのピンク色の肌をした苺大福なるものがこちらをじぃっと見ている。
結局、みたらしと苺大福、柚子クリームあん大福を購入し、おばちゃんのおおきにという言葉に少し幸せを感じながら店を後にした。やはり関西のおおきに〜はええですな。
帰宅してからじっくりとそれらを味わったがやはり都の和菓子は絶品であった。
中でも苺大福はつぶあんかこしあんが主流かと思っていたが、こちらはクリームあんでこれまた和洋折衷な味であった。
都は三度目であったがまだまだ未開の和菓子屋がたくさんあるに違いない。
都の和菓子に囲まれて生活できたらどんなに幸せだろうと今も都への移住を企てる私である。